※こちらは、「不動産マネジメントフォーラム2008」 ( 2008.3.4開催 )で講演した内容を編集したものです。

東急リバブル株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション事業統括部 PREの流動化ソリューション〜マーケットとソリューション事例 大きなビジネスチャンスが期待される公的不動産の流動化市場

東急リバブルソリューション事業本部では、公的機関が保有する資産の活用・処分など、公的不動産の流動化にいち早く取り組んできました。旧日本郵政公社をはじめ、今日までに数々の実績を重ねてきましたが、それら実際のPRE流動化事例をもとに、当社がPRE流動化ソリューションをどのように捉え、具体的にどのような取り組みを行っているのかをご紹介していきたいと思います。

ソリューション事業本部 ソリューション事業統括部 グループマネージャー 鈴木 伸宏


公的不動産の市場規模


日本の不動産規模(推計) データ:国土交通省・財務省・不動産経済通信

財務省等の資料によれば、国有財産、地方公共団体や地方公営企業、第三セクターなどの公的機関が保有する不動産を合わせれば、民間法人の所有不動産(約490兆円)を大きく上回ります。(右図参照)

一言に公的機関と言っても、その組織・構成は多彩です。その中でも、保有不動産の有効活用や売却が公表されるなど、流動化がとくに期待できる分野は、「国有財産」、「地方公共団体」、そして「独立行政法人」です。

「国有財産」は、外部からの働きかけによって売却化がスピードアップしています。価値のある優良不動産が市場に放出される可能性は、今後ますます高まってくると期待されます。

一方、「地方公共団体」は、平成の大合併によって大きく再編されました。しかし、各市町村における低・未利用地は増加傾向にあり、特に地方の財政状況は極めて厳しい状態のようです。財政健全化法が制定されたことにより、地方自治体の財政健全化は今後急速に進むと見られています。

また、「独立行政法人」は、財政支出削減を目的とした整理合理化計画により101法人から85法人への削減・統廃合が進められており、この計画によって6,100億円規模の保有財産売却、国庫への返納が見込まれています。

これら国、地方公共団体、独立行政法人において公表された不要資産の売却計画だけでも相当なボリュームですが、その他にも公益法人、特殊法人、特殊会社、第三セクターなどを加えると、公的不動産の流動化市場は膨大な規模になるでしょう。今後、公的不動産の売却に関わるビジネスは、ますます拡大していくと予想されます。



PRE流動化戦略の構築


公的不動産の流動化戦略を構築する上でまず必要なことは、アセットの現状を的確に把握し、保有すべき不動産と処分すべき不動産を明確にすることです。当社では、「デューデリジェンス」、「ポートフォリオの策定」、「スケジューリング」の手順で最適なPRE戦略の構築を行っています。

まずは「デューデリジェンス」 。実勢価額の把握・検証を行い、マーケットとの整合性をはかります。公的不動産の流動化にあたっては、マーケット価額と乖離した過去の不動産鑑定評価を元に最低売却価額が設定されているケースが散見されます。当社では、国内84,000社の協力会社とネットワークを構築し、全国のあらゆる案件をサポートすることが可能です。また、当社専門チームがアセットを精査し、多角的な視点から実勢価格を算出します。これによって、所有すべき不動産と処分すべき不動産の見極めが可能となります。

東急リバブルのデューデリジェンス体制

次に、企画立案部分にあたる「ポートフォリオの策定」です。公的不動産には、売却の容易な物件群がある一方、想定購入者が限定される物件群や単体での売却が非常に困難な物件群があります。これらをどのように売っていくかが、ポートフォリオの要とも言えます。当社では、既存鑑定書との差額を把握するとともに、物件のパフォーマンスを最大限に引き上げるポートフォリオの策定を目指しています。

「スケジューリング」は、効果的な売却期間の設定や情報公開度合を決める大切な要素です。例えば、売却時期をずらすことで売却不調となった物件を以後のバルク売却に組み込んだり、情報漏洩のリスクを考慮してアセットの特性に最適な購入者を想定した紹介・入札を実施するといった工夫も求められます。当社では、売却の実現に向けて的確かつ柔軟なスケジュールを策定し、ご提案しています。



公的不動産の売買の特長と留意点


当社が携わった公的不動産での事例をいくつか挙げてみます。

■ 売却業務支援事例

1. 独立行政法人 年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)

売却アドバイザリー業務を受託。RFO初のバルク売却を行い、決められた期限内で売れ残ることなく完了。

2. 独立行政法人 緑資源機構

関東と北海道の宿舎の売却をサポート。鑑定評価と市場性の乖離を修正しながら、売却を実現。

■ 当社購入事例

1. 中日本高速道路株式会社(旧・道路公団)

首都圏および中京地区にある未利用地、道路残地、社宅、保養所、区分マンションなど46件。1ヶ月間でデューデリジェンスを行い、購入者として単独で入札に参加し、バルクで落札。

2. 旧日本郵政公社

178物件に対して共同投資を行い、うち88物件を当社が購入。全国269物件のデューデリジェンスを約2ヶ月間で完了。

3. 国家公務員共済組合連合会(KKR)

198物件に対して共同投資を行い、うち69物件を当社が購入。全国274物件のデューデリジェンスを約3ヶ月間で完了。

上記事例をもとに、公的不動産の特長と留意点をまとめてみると、下記のようなことが言えます。民間不動産の取引とは異なる部分もありますが、総じて大変魅力的で価値のあるアセットが多いと言えるでしょう。



夕張市の支援について


平成19年、夕張市の財政は破綻し、財政再建団体に移行しました。炭鉱閉山の後処理の負担、炭鉱法の失効による補助金や地方交付税の大幅減少、人口の急減による歳入の減少、観光施設の整備負担などによる膨大な赤字の累積が、財政破綻の原因になったと言われています。財政再建計画では、様々な観点からの財政の再建を図り、353億円の累積赤字を毎年約20億円のペースで返済していく方針が示されています。中でも不要な不動産の処分は、財政再建のための緊急の課題です。

そこでこの度、当社で夕張市のPRE戦略に関してご提案させていただくことになりました。

対象となる不動産は約100物件。アセットも多様です。サポート内容は、これらの物件の実勢価格の把握、売却のための戦略協議、ポートフォリオの協議。2007年秋より現地調査を開始し、2008年夏頃に調査・査定を終える予定です。当社が策定するポートフォリオを元に、夕張市は販売物件と販売方法を決定、その後、入札により売却業務委託業者の選定を行うことも発表しています。

当社が、不動産流通企業として初めて自治体と公的不動産の流動化に関わる業務提携を実現できたこと、また、売却業務も民間企業に委託する方針が示されたことは、公的不動産の流動化における民間企業参入の前例として、大変重要な意味を持てたと考えています。



今後の公的不動産戦略


国土交通省のPRE研究会においても、民間企業におけるPREサポート(不動産コンサルティング的な不動産戦略支援)は期待されています。私たちにとっても、公的不動産が売却されるプロセスには様々なビジネスチャンスが潜在しています。夕張市において当社が取り組んでいる業務は、まさにその部分であり、夕張市の発表どおりのスキームが実現すれば、今後、他の地方自治体においても同様のビジネスが創出されることになるでしょう。それは独立行政法人についても同様です。

今後当社としても、PRE流動化ビジネスのパイオニアとしてこれまで培ってきた実績やノウハウを活かすと同時に、既成概念にとらわれることなく新しい発想と工夫をしながら、この新たなビジネスチャンスに積極的に取り組んでいきたいと思います。



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