※こちらは、「日経産業新聞フォーラム2008」 ( 2008.4.16開催 )で講演した内容を編集したものです。

東急リバブル株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション事業統括部 第三セクターの再生とM&A戦略 地方自治体財政再建に向けた、不動産ソリューション

東急リバブル・ソリューション事業本部では、民間企業や公的セクターの再生を目的とした不動産アドバイザーを数多く務めてきました。その中では、M&Aの手法を用いた事業再生も少なくありません。実際、M&Aと不動産売却を選別または併用することによって、お客様の企業価値を高めることに成功した案件も多々あります。これら第三セクター等の再生に向けた当社の取り組みと不動産戦略について紹介していきたいと思います。

東急リバブル ソリューション事業本部 第五部 部長 東 和輝


公的セクターの全体像


一言に公的セクターと言っても、その組織・構成は多彩です。まず、国の公的機関としての中央省庁、その管轄下の独立行政法人や特殊法人、第三セクターなどがあります。一方、都道府県や市町村にも、それぞれが管轄する地方公営企業や第三セクターがあります。今回はこの第三セクター等がテーマとなりますが、その数は全国でおよそ8,000法人とも言われています。

国土交通省から発表された平成18年の土地基本調査によれば、公的セクター、民間法人、個人を合わせた全ての国内不動産は、時価ベースで約2,300兆円。その中には第三セクター等が所有する不動産も多く含まれています。近年急拡大したJ−REITや、証券化不動産の規模と比較しても、その所有不動産の規模は大きいものと推測されます。

これら第三セクター等の財務状況について、総務省の調査では約35%が経常赤字であるとしています。しかしながら、多くの地方自治体の財政状況が逼迫した状態にあると言われる中、その出資先である第三セクター等については、厳しい財務状況の法人がまだまだ潜在している可能性もあります。

公的セクターの資産・財務に関する方針

そのような状況を改善するため、政府は資産・財務に関する方針を示しています。総務省は、平成15年12月に損失補償を原則行わない指針の改定を行い、また、平成19年6月からスタートした「地方財政健全化法」により、地方自治体は第三セクター等について不採算事業の改善・廃止を行うことが急務となっています。さらに、「地域力再生機構」の設立も推進されていることから、今後、第三セクターの再生は急ピッチで進んでいくことが想定されます。したがって、第三セクターをはじめとした公的不動産の流動化市場は、大きく拡大していくと考えています。



第三セクターの不動産流動化


第三セクター等が抱える課題の中で、赤い部分を当社がサポート

第三セクターの再生の手法は、リストラクチャリング、リエンジニアリング、民営化など様々です。この中で私たちがお手伝いしているのは、財務リストラにおける遊休資産の売却や資産の評価替え、民営化した場合の所有資産の民間譲渡など、不動産の流動化によって公共事業やサービスの継続を支援する業務です。具体的には次のような手法を採っています。

(1)公設民営、PFI、指定管理者制度

土地・建物等の資産はそのまま所有し、運営のみを民間に委託する手法です。国民の生活に重要なインフラ事業である交通事業や医療施設に適した手法だと言えます。青森県の「青い森鉄道」はこの手法を用いています。


(2)セール&リースバック方式

土地建物、または建物のみを別の公的セクターや民間企業に売却し、その売却代金により負債を弁済すると共に、固定資産税・都市計画税や維持管理費等のランニングコストを削減します。事業については継続して第三セクターの事業会社が行います。これは、過大な初期投資による借り入れが重荷になっているものの、その債務さえ無くなれば一定のキャシュフローを確保できる場合に適している手法です。例としては岡山県の商業施設「アルネ津山」がこの手法に該当すると思います。


(3)民営化

事業も資産もすべて民間に譲渡し、その譲渡の代金をもって負債を弁済する方法です。消費者の趣向の多様化に対応して常に変化し続けなければならない商業施設やレジャー・宿泊施設等に適している手法だと思います。「大阪シティドーム」「ベイサイドプレイス博多埠頭」「那須高原スキーリゾート」などが例として挙げられます。


このように、どのような方法で再生を行うにしても、第三セクターが自ら行うのではなく、民間の専門家によるノウハウの活用も必要だと考えます。例えば、債権者との調整や経営改善をサポートする弁護士や会計士、経営コンサルタントなどのターンアラウンドマネージャーは日本にもたくさん育ってきていますし、また、施設の運営や管理には各種オペレーション会社やPM会社があります。

そして、リノベーション等の不動産有効活用や、財務リストラによる資産処分については、当社のような不動産関連会社を活用されることがスムーズな問題解決につながります。実際、不動産の売却といっても、様々な種類の不動産があります。売り難いものをいかに売るか、売り易いものはいかに良い条件で売るかといったように、高度なノウハウも要求されます。また、コンプライアンスの観点から、環境リスクへの対応等、数多くのアドバイスが必要になります。このような点から我々のような専門企業を活用することが、再生を成功に導くポイントであると考えています。



不動産売却戦略の策定


不動産売却に焦点をしぼって戦略策定のポイントをまとめると、次の3点になります。

(1)透明性と競争性

第三セクター等には、金融機関をはじめ多くのステークホルダーが存在します。また、債務の圧縮は国民の税金にも影響するテーマでもあるわけですから、再生事業の透明性を図ることは重要です。民間の不動産会社など第三者への売却業務委託や、入札方式による売却などによって透明性を高めることができます。このとき、市況の変化による需給バランスや、物件特性を考慮した最適な入札方法やタイミングを慎重に選択し、競争力を高める必要もあるでしょう。


(2)最有効利用者の把握

施設の利用方法が現時点での最有効利用なのか、用途転換は必要ないのか、また可能なのか。そもそも現状の施設で買主の出現する可能性があるのか、あるいは、施設を取り壊して更地にしたほうが高い価格で売却できるのではないか……。といったような、最有効利用者を把握するデューデリジェンスは、事業再生のためにとても重要です。さらに、最有効利用が現状と異なっていれば、用途変更等、行政への提案が必要になることもあります。場合によっては用途地域の変更をしなければ売却できないケースもあるのです。地方においてこのような案件に遭遇することは少なくなく、難しい提案ではありますが、実際当社でも成功した事例があります。


(3)M&A(事業売却)と不動産売却の適切な選択・組み合わせ

事業再生においては、M&Aの手法が効果的な場合もあれば、逆に不動産として売却したほうが良い場合もあります。また、事業と不動産を切り離して売却したほうがトータルとしての企業価値が上がる場合もあります。いずれにしても、第三セクター等の再生に際しては、純資産としての不動産の価値を最大限に引き出す戦略の立案が必要と言えるでしょう。



今後の課題


海外不動産投資家アンケート(国土交通省発表資料より抜粋)

近年グローバルマネーのアジアへの流入は増加しており、日本国内にも海外マネーが多く流入しています。例えば、北海道のニセコでは、オーストラリア資本によるスキー場の買収を機に、オーストラリアを中心とした外国人観光客が大幅に増加しました。長野県白馬のスキー場も外資の買収による外国人観光客の増加で盛り返しています。ゴルフ場では、福島県などで韓国資本による買収により、韓国人観光客の大幅増加につながっています。

どれも共通するのは海外マネーと海外観光客の誘致という点です。特に不動産に関して言えば、第三セクター等が所有する地方物件に、都心の商業ビルのように海外資本を呼び込むことができれば、競争を喚起することもでき売却もより容易になるでしょう。

しかしながら、国土交通省の海外不動産投資家アンケートにもあるように、海外投資家が日本へ投資する際にはまだまだ障害が多いようです。今後は、早急に行政サイドと民間が協力して海外投資家が投資しやすい環境づくりを行うことが、不動産ソリューションへの近道であり、地方自治体再建のための第三セクター等の再生へつながることを、最後に提言させていただきたいと思います。



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