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【Vol.8】「石見銀山」の世界遺産登録に沸く・島根県

中国地方の日本海に面した島根県は、 個性ある3つの地方文化を育てている。2007年に「石見銀山」の世界遺産登録で注目を浴びた県西部の石見エリア、古代神話と出雲大社、奈良時代の開湯といわれる古湯「玉造温泉」で有名な県東部の出雲エリア、そして日本海に浮かぶ天皇や上皇の配流(はいる)地として歴史に深く名を刻む隠岐エリア─今回はこの3エリアを一つずつ少し詳しく紹介しよう。
神話と蕎麦と温泉の「出雲エリア」
島根県エリアマップ 「出雲」と言えば神々の国を思い浮かべる人も多いだろう。古代日本の神話の宝庫として知られる出雲では、興味深い神話が多く伝えられてきた。733年に完成したといわれる「出雲風土記」の国引き神話によると、「八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)が、出雲の国は狭く未完成の国なので、他の国の余った土地を継ぎ足して広くしようとした。そして、佐比売山(石見地方の三瓶山)と火神岳(出雲地方の大仙)に綱をかけ、『国来、国来(くにこ くにこ)』と国を引き、できた土地が現在の島根である」と、国の誕生にまつわる逸話が記されている。

また、奈良時代に著された「古事記」や「日本書記」に登場するスサノオや大国主(おおくにぬし)の神話は、この出雲が舞台となっている。神話にも登場する出雲大社は、縁結びの神様としても有名で、日本で最も古い神社建築の形式をもった伊勢神宮と並ぶ代表的な神社だ。

出雲エリアは神話だけでなく、日本三大蕎麦の一つ、「出雲そば」でも有名だ。玄そば(そばの殻つき)の挽きぐるみのそば粉を使っているため、そばの色が黒っぽいのが特徴的で、歯ごたえのある麺をしっかり噛んで楽しむという食べ方が出雲流。一番人気は「割子そば」だ。3段重ねで一人前とし、朱塗りの割り子(重箱)に盛られたそばに、薬味のネギ、大根おろし、海苔などをのせ、だし汁をかけていただく。出雲では古くは、重箱のことを「割り子」と読んでいたが、明治時代頃から、今の丸型の漆器に変わったという。

さらに、奈良時代の開湯といわれる古湯「玉造温泉」も名物で、今も歴史深い、落ち着いた趣を醸し出す高級な佇まいで人気を博している。前述の「出雲風土記」にも登場しており、神の湯と言われている。江戸時代には松江藩主の湯治場にもなっており、「湯之介」という温泉を管理する役職まであったという。
縁結びの神様としても有名な日本最古の神社建築「出雲大社」
世界の銀の1/3を産出した「石見エリア」
次に、今回話題になった石見銀山のある県西部─「石見エリア」を見てみよう。石見銀山は、鎌倉時代後期の1309年に当時の石見の守護であった大内氏によって発見されたと言われるが、本格的な開発が始まったのは室町時代の1526年以降のことらしい。博多の豪商・神屋寿禎によって進められたと言われている。以来約400年にわたり、世界有数の銀鉱山として採掘されてきた。(大正12年(1923年)休山)。

石見銀山で産出される銀は高品質で信用度が高く、また量も豊富で、アジア諸国とヨーロッパ諸国間の交易には欠かせないものだった。16世紀半ばから17世紀前半の全盛期には、世界の産銀量の約1/3を占めた日本銀のかなりの部分が石見銀だったと考えられている。当時の様子を、フランシスコ・ザビエルは次のように記している。 ─「カスチリア人はこの島々(日本)をプラタレアス(銀諸島)と呼んでいる。この諸島の外に銀のある島は発見されていない」。石見は当時の世界経済を動かす重要な役割を果たしていたわけだ。

明治時代、最新式の技術を駆使して銀生産を行っていた「清水谷精錬所跡」(大田市大森町)
もう一つ「石見エリア」で忘れてはならないのは、石見出身の文豪・森鴎外の存在である。彼がいかに石見を愛したかは、遺言に「余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス(森鴎外ではなく、称号、名誉などない、一人の石見の人間、森林太郎として死にたい) 」と記したことからもわかる。出身地である津和野には、森鴎外記念館が建てられている。
伝統行事の「隠岐エリア」
最後は「隠岐エリア」だ。島根半島から北東へ約65km、日本海に浮かぶ隠岐諸島は大小180余りの島々から成り立つ群島型離島である。西ノ島、中ノ島、知夫里島、島後の4島に人が住み、島後に対して前者3島を「島前(どうぜん)」と呼んでいる。

隠岐は古くは「配流(はいる)地」として、後鳥羽上皇、後醍醐天皇が流されたことで知られた歴史的スポットでもあり、浄土が浦の絶景、牛突き、神楽など自然環境と伝統行事の多彩さで観光客を惹きつけている。

隠岐へのアクセスは、境港や七類からフェリーで約2時間半、高速船を使えば約50分弱。また飛行機便もあり、所要時間は出雲空港から約30分、大阪から約50分だ。隠岐は遠いようで意外に近い。ちょっと足を伸ばして、隠岐ならではの自然や伝統行事に触れてみるのも旅の収穫の一つになるだろう。

従来の島根県の観光の中心は宍道湖や松江などがある出雲エリアに偏りがちだったが、今回の石見銀山の世界遺産登録で石見にも観光の大きな拠点が誕生することとなった。出雲、石見、隠岐の3つの独創的なスポットと、太古の時代より語り継がれる様々な神話や歴史の逸話─まさに神秘に包まれた町といえよう。
参考文献:
『島根県ホームページ』
http://www.pref.shimane.lg.jp/
『しまねヴァーチャル・ミュージアム 石見銀山』ホームページ
『石見銀山ホームページ』
http://www.iwamigin.jp/ohda/minasdeplata/ginzan/index.html
『隠岐の島町ホームページ』
http://www.town.okinoshima.shimane.jp/
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