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【Vol.11】くいだおれは消えても、ミナミの火は消えない・道頓堀

大阪ミナミといえば、日本を代表する歓楽街。特にグルメ、飲み歩きの街として知られている。そのシンボルとも言える“くいだおれ太郎”が、2008年7月に姿を消した。総合食堂ビル「くいだおれ」の閉店にともなう処置だが、あまりに知名度と人気が高い“くいだおれ太郎”については、保存を望む声も高い。“くいだおれ太郎”が去ってもその心は受け継がれているという、そんな大阪ミナミ、道頓堀にスポットを当ててみよう。
戦後の復興の願いがこもった「くいだおれ」
“くいだおれ太郎”がミナミに姿を現したのは、今から58年前、1950年のこと。終戦後、焼け野原となった大阪の街を「くいだおれの街にしたい」と、くいだおれの創業者─故・山田六郎氏が設置したものだ。

「店に入るお客様だけでなく、道行く人々にも楽しんでもらわなあかん」という想いが込められている、このくいだおれの理念は徹底しており、NHKの試験放送が始まる前年にテレビを店内に設置したり、1959年のビル建築の折りには全館空調の完備など、時代を先取りするサービスを提供してきた。

当初“くいだおれ太郎”には名前はなく、単に“くいだおれ人形”などと呼ばれていた。しかし1994年、関西新空港の開港を記念して、第一便にこの人形が大阪を代表するオブジェとして登場することになった際、搭乗手続きには名前が必要ということで、“くいだおれ太郎”と正式に名付けられたのである。

戦後の復興から現在までのミナミを見守り続けてきた“くいだおれ太郎”。
しかし皮肉なことだが、彼が姿を消した理由の一つに、様々な名物飲食店やレジャー産業が発展した「ミナミの繁栄」を挙げることができる。今、道頓堀界隈を歩けば、山田氏が望んだ夢が現実になっているのが一目瞭然だ。

だが、だからこそ総合食堂だった「くいだおれ」は経営難に陥ったのだとも
言える。閉店と共に“くいだおれ太郎”が姿を消すのは残念だが、実はその
DNA、ミナミの繁栄にかける想いは道頓堀で確実に受け継がれている。
58年間、ミナミの街角を見つめ続けた“くいだおれ太郎”
※……当時、日本全国でのテレビ受像器の台数は50台と言われている。一台あたりの価格は平均的なサラリーマン年収の数年分だった
ミナミはド派手な立体看板の宝庫
左手前が「かに道楽」の看板。この通りの奥には「づぼら屋」のふぐがある 飲食街として栄えるミナミだが特徴の一つに、ド派手で観光客を驚かせる看板がある。その代表格だった“くいだおれ太郎”だが、実は道頓堀から少し離れた千日前にも、かつては千日前の顔と言われた立体看板─総合食堂千日堂の“すっぽん太郎” が存在した。だが 「くいだおれ」に先立つこと7年前、2001年の閉店と同時に姿を消してしまっている。

そんな大先輩が姿を消した後も、ミナミでは、道行く人の目を楽しませてくれる看板は健在だ。最も有名なのは、戎橋の脇に輝く「グリコ」だ。さらに、戎橋と道頓堀の交差点にある「かに道楽」のカニ(写真左)。間違いなくミナミ最大級の立体看板であり、何より驚きなのはカニが動くことだろう。

そのカニを左手に見て道頓堀を歩いていくと、今度は巨大なフグに出会う。フグ料理専門店「づぼら屋」の看板だ。他にも大小様々な看板が、まさに不夜城といった風情を醸し出している。しかも、不夜城という言葉が持つ負のイメージはほとんどなく、どこか笑えるところが、
まさに大阪だ。
新顔も登場、そして“くいだおれ太郎”はどこに?
道頓堀名物と言っても過言ではない立体看板には、新顔も登場している。道頓堀と御堂筋がぶつかる辺りには「たこ屋道頓堀くくる」の巨大なタコが人々を見下ろす。また、かつての浪速座跡にできた「サミー戎プラザ」では“えべっさん”が笑顔を見せている(写真右) 。去るものがあれば来るものもあるのだ。

山田氏の「店に入るお客様だけでなく、道行く人々にも楽しんでもらわなあかん」という言葉は、それと知らず、道頓堀で商売する人たちに受け継がれているのかもしれない。それを体現してきたのが“くいだおれ太郎”、その“人”に他ならないことは誰もが納得するだろう。

残念ながら2008年8月現在、いまだ“くいだおれ太郎”の今後は定まっていない。だが、多くの企業、団体がその引き取りを希望しているという。どこが引き取るにせよ、ひっそりと保存されるのではなく、山田氏の思いを受け継いで、誰もが目にすることができるようになることを
“くいだおれ太郎”も望んでいるだろう。
道頓堀の新しい顔とも言うべき「サミー戎プラザ」のえべっさん。元浪速座跡といえば、古い人にもわかりやすい場所だ
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