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不動産王列伝

【Vol.2】 ブランド確立で不動産の付加価値を高めた男 ドナルド・ジョン・トランプ<後編>

不動産にもブランディング感覚を持ち込み、成功を収めたトランプ。 今回は、ブランド確立へのこだわりとPR手法、そして自身の成功への執着心にスポットを当ててみよう。
セレブリティの心理をついたブランディング
  建物の隅々にまでこだわるトランプの建築は、マンハッタンを代表する高級コンドミニアム(高級分譲マンション)、「トランプ・タワー」にも現れている。トランプの妻、イバーナは、1週間もかけてイタリアの採石場を調査し、ブレッチア・ペルニケ大理石をこのタワーのコンドミニアムに採用することに決めたという。さらに、エレベーターの縁取りが壁に調和しないという理由から、エレベーター全体を取り替えさせたというエピソードも残っている。

 このトランプ・タワーは、用地入手の時からマスコミの話題にのぼった。まずトランプは、ニューヨークの五番街、ティファニー隣の12階建てビルの土地賃借権を手に入れた。そして、床面積を増床して採算をとるために隣接の土地も購入。これで、土地の南側と東側がティファニーに隣接することになった。そのうえ、ティファニーから「空中権」も買ったのである。その後、トランプは70階相当のタワーの建設許可を得るため、斬新なプランをニューヨーク市に提出。五番街は小型で優美な建築物が軒を連ねる一角であり、大型建造物は景観を損なうとしてプランには反対の声も多かった。この審査の動向はニューヨーカーの注目を集めるものとなったのである。そして、半年の審査を経て、市の計画課は2階分の階数を減らすことを条件に、プロジェクト進行の許可を出した。そのプランとは、店舗に囲まれた6階分の高さをもつアトリウム、13階にわたるオフィス空間、その上に263室のコンドミニアムを含むものだ。実のところ、オフィスはコンドミニアムを可能な限り高い階数に設け、プレミアムをつけるためのものだったという。

 プロジェクトが始動すると、今度は早期進行を求めるトランプと建設反対派が新聞紙上などで派手な論戦を展開していた。その一方で、タワーのコンドミニアム販売は、実に静かに進行されていた。モデルルームも作らず、ニューヨーク・タイムスにも広告掲載は一切なし。興味があれば、現地でスライドをご覧ください、というのが唯一のPR活動。そのプレゼンテーションも、非常に地味だったという。だが、コンドミニアムが一戸も売れていない状況で、6週間に5度の値上げを行っている。これは前例のない販売戦略で、見事にセレブリティたちの心理をついたものだった。結果、価格は1ユニット50万ドルから1200万ドル、1984年の竣工時前には半数に買い手が付いていたのである。販売高は2億7500万ドルに達し、買い手には、スティーブン・スピルバーグやソフィア・ローレンといった著名人が名を連ねた。さらに、オフィスや店舗の賃貸料も高水準で、カルチェやバラセッティなど一流テナントが入居した。トランプ・タワーの店舗スペース全体の年間賃貸料は1億5000万ドルともいわれ、これがほとんどそのまま純利益となったという。
「首だ!」という流行語も生み出したトランプ
  1992年、経営するカジノが経営破綻し、折からの不動産不況のあおりで自己破産寸前まで陥ったドナルド・トランプ。同業者が沈んでいく中、築き上げたブランド戦略で生き残り、自己顕示欲と押しの強さで再び強力な億万長者へと蘇った。2001年には住居用としては世界一の高さを誇る、地上90階建てのトランプ・ワールド・タワーを竣工。不動産事業の傍ら、自らがプロデュースする『ジ・アプレンティス』というTV番組の司会者も務める。番組中のトランプの決め台詞、「You’re fired(首だ!)」は、2003〜2004年の全米流行語大賞まで獲得した。

 そして、今年8月。一時はトランプ傘下のビルで最高の採算性を誇った、トランプ・ホテルズ・アンド・カジノ・リゾーツが18億ドルもの負債を抱えて経営破綻に陥った。トランプは会長職を継続するがCEOからは退任。この破綻による彼自身の資産への影響は軽微に留まっているという。  今後、彼のビジネスはどのように発展するのだろうか。トランプは、まだまだ話題を提供してくれそうなデベロッパーである。(完)

※セレブリティ・・・上流階級、品格のある著名人などを指す
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