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不動産王列伝

【Vol.8】 30年でタイの大地主となったカンジャナパス一族の長 モンコル・カンジャナパス

親から引き継いだ家業の時計店を拡大し、不動産ビジネスにも進出した華僑のモンコル・カンジャナパス。タイで2つの最大級不動産会社を育てるに至った経緯とは?
時計店からの出発
バンコクのオフィス街
バンコクのオフィス街
タイの華僑ビジネスは、1950年代以降、政府の方針により順調に伸びてきた。いわゆる財閥といわれるコングロマリット企業が多く、そのほとんどが金融や流通、製造など、進出分野は多岐に渡る多角経営で、タイの経済成長を支えている。

3つの企業体を運営するバンコク・ランドグループもその一つで、特に不動産分野では短期間でめざましい発展を遂げた財閥だ。時計・メガネの生産と販売業務を統括するムアン・トン(通城東南亜機構)、香港における事業を統括するイーヒン(義興)、主にタイの一族事業を管理する持ち株会社のカンジャナパス。これらの企業の創始者であり、2003年に84歳で他界するまで前線で活躍したビッグ・ボスが、モンコル・カンジャナパスである。

1919年、モンコルはバンコクの時計・メガネ店の息子として生まれた。少年時代から家業を手伝い、ビジネスを学んでいたという。1944年に父親が亡くなり、家業を継ぐ。3年後には、バンコクで時計店のムーン・トンを開業し、本格的な事業展開を開始。1950年代にはゴールデン・アイランドという別会社を設け、タイの島嶼エリアでのツバメの巣採取許可をとりつけ、多角経営への一歩を記した。

1960年代に入ると、モンコルは海外での事業展開をスタート。香港に国際眼鏡を設立し、メガネ生産を開始する。1962年にはセイコーの東南アジアにおける販売代理権を取得して、各地の販売網を統括するムアン・トンを設立。翌年、香港に設立した時計を生産するステラックス(後に不動産分野へ参入)には、長男のアナンドが経営にあたる。70年代に入ると、7社の時計関連会社を買収し、72年に香港で株式上場を果たす。その後も同社は順調に事業を拡大し、一族の香港でのフラッグシップ企業となっていった。
巨大プロジェクトを推進した1980年以降
モンコルは、家業である時計・メガネ関連の事業を成長させるかたわら、1960年代から不動産分野へ参入する。66年に、不動産開発をメイン事業に据えたバンコク・ランドを設立。92年に上場後、タイでの中心的事業体となる。そしてモンコルは同社を通じて、バンコク周辺の土地を低価格で大量に買い占めていく。

1999年頃は、所有面積がバンコクと郊外だけで約700haといわれていた。80年代以降は、バンコク首都圏で約20の大型不動産プロジェクトを推進する。その一つがバンコク郊外のベッドタウン、ムアン・トン・タニ(通城新都)の開発であり、90年代初頭に着工された。投資総額108億ドルといわれるこのプロジェクトは、360haの土地に住宅、商業施設、工業団地などが建設され、10年後の完成時には45万人が住むタイ最大の衛星都市となる開発計画である。バンコク間には高架鉄道の建設も行っている。

バンコク・ランドで土地を買っている最中に、モンコルは68年にもう一つの不動産会社「タナヨン」を立ち上げた。同社は約20年間にバンコク郊外で240haもの土地を買収しながら、開発は行わずにいた。しかし、91年になると、香港を拠点とするグループ企業の不動産業務を譲り受けると同時に上場。その後、住宅団地、オフィスビルなど大規模な不動産開発を開始する。

タナヨンは、1999年の時点でタイ国内に1,440haの土地を所有し、うち640haはバンコク市内という、一族をバンコクきっての大地主に仕立てた企業となった。同社は不動産事業だけでなく、高架鉄道、通信、エネルギー分野にも参入している。

タイ金融危機を乗り越えて
モンコルには11人の息子がいる。長男のアナトンは香港での事業とバンコク・ランドを率い、次男のチャイヤシスはバンコク・ランドの大型開発の推進役であった。三男のケリーはハァーケータイとタナヨンのCEOを務める。他の息子たちもそれぞれ一族企業の会長や社長として各社の指揮を執る。モンコルの死後も徹底した一族経営が続けられているのだ。

この一大財閥も不動産事業が中核だっただけに、90年代後半のタイの金融危機では不動産価格暴落で大打撃を被り、所有していた不動産や関連企業の整理を余儀なくされた。一時は倒産の危機をささやかれたほどである。

しかし、2003年にはバンコク市内に2つのホテル建設をアナウンスするなど、復活の兆しを見せてきた。モンコルの時代も世情に合わせて事業の重点を香港にタイにと移しながら成長してきた。今、当財閥は次の展開段階へとさしかかっているようだ。
参考文献/
朱炎著『徹底検証 アジア人華人企業グループの実力』(ダイヤモンド社、2000年)
朱炎著『アジアの新龍 華人ネットワークの秘密』(東洋経済新法社、1995年)
bankrupt.com/TCRAP_Public/991019.MBX
http://www.hvsinternational.com
略歴 PROFILE
モンコル・カンジャナパス(黄子明) Mongkol Kanjanapas
(1919−2003)
タイ、バンコク生まれ。中国広東省に本籍がある。親の経営する時計・眼鏡店を手伝い、1944年、父の死後に家業を引き継いだ。時計店やツバメの巣を採取する事業を始め、1966年にバンコク・ランドを設立した。
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