 |
 |
| 東京都港区六本木7丁目― この都内でも屈指のホットスポットに、巨大なアートセンターが誕生した。その名は、「国立新美術館」。国立の美術館としては5つ目、最大規模の美術館だ。都心に残された広大な敷地に、国際的建築家・黒川紀章氏らの設計によって、その斬新な姿を現した。 |
 |
| 新たなアートの波が押し寄せる六本木に威風堂々と現れた巨大建築― 「国立新美術館」 |
 |
 |
 |
六本木は、現代美術を中心に展開する六本木ヒルズの森タワー「森アーツセンター」を始め、現在進行中の六本木防衛庁跡地の再開発プロジェクト「東京ミッドタウン」内に移転が決定しているサントリー美術館(2007年春開館予定)など、東京のアートスポットとして一躍脚光を浴びているエリアだ。そして2007年1月21日、新たに「国立新美術館」が堂々開館する。
そもそも、新しい国立の美術館建設の要望は、昭和50年代の初めから国内の美術関係者より上がっていた。現存の美術館だけでは、国内の美術団体による公募展などの活動に手狭さや不便さがあったためだ。
1995年の村山内閣の頃、当時の連立与党の重点政策の一つに、国民が身近に芸術文化や文化財に親しむ機会を拡充し、博物館、公募展開催施設などの建設をすすめるという項目が立てられた。それに伴い、ようやく長年の念願がカタチになり、「ナショナルギャラリー(当時仮称) 」のプロジェクトが始まったのである。
|
| 後に、国外のコレクションを持つナショナルギャラリーとの混同を避けるために、新名称を公募、2003年に「国立新美術館」と決定した。これまでの国立美術館と違い、コレクションは持たず、各種美術団体等への展覧会会場の提供、近現代の美術を中心とする自主企画展の開催、新聞社や他の美術館との共催による展覧会の開催などを主として展開していく、という発想のアートセンターだ。 |
|
| コンセプトは「森の中の美術館」。都内の希少な立地に、環境共生とバリアフリーをテーマに展開 |
 |
 |
建設地として白羽の矢がたったのは、2001年に駒場にキャンパスを移転した、東大生産技術研究所の跡地だった。ここは、かつて2.26事件を起こした将兵が使用していた、陸軍の歩兵第三聯隊兵舎があった場所である。建物は同潤会アパートなどと同様、関東大震災後の復興建築物として建てられた、日本で最初の本格的な鉄筋コンクリート造の建築物だった。その後、東大生産技術研究所として使用されていたが、今回の国立新美術館建設にあたっては、その一部が歴史的建造物として保存されている。
敷地面積30,000m2という広大な地に建築される新美術館は、日本を代表する建築家・黒川紀章氏ら、日本設計共同体に委託されることとなった。総工費350億円、延床面積48,000m2、展示面積14,000m2という巨大なミュージアムが今、その堂々たる姿を現したのだ。黒川氏が提唱するコンセプトは、「森の中の美術館」。隣接する青山公園の都会のオアシスともいうべき緑の風景、そこに溶け込むように造り込まれた庭園が美しく広がり、ピロティや屋上に竹林を植栽するなど、環境と共生する建築物のあり方を、ここに体現したという。
|
車椅子対応のエレベーターなどのバリアフリーへの対応はもちろんのこと、地下自然換気による省エネ、省資源対策、ガラスのカーテンウォールの前面にかかる水平のガラスルーバーとマリオン(アトリウムの屋根とガラスを支える縦の鉄骨)による、日射熱や紫外線のカットなど、随所に先進の環境対策が施されている。 展示スペースは、1,000m2の展示室が10室、2,000m2の企画展示室2室、そのほか、アートライブラリー、講堂、研修室をはじめ、レストラン、カフェ、ミュージアムショップなどがある。
また、数ある展示会場への搬入などが潤滑に行えるようにトラックヤードなどの設計には機能性を重視した。また、東京メトロ千代田線「乃木坂」駅と直結しており、利便性にも富んだ施設となる模様だ。
建物内部は、とにかく天井が高い。3階まで吹き抜けのアトリウムは、空気の威圧感を感じるほどである。企画展示室も1階は、天井高5m、2階は8mを確保。余裕を持って作品を展示でき、多くの動員にも耐えられる巨大なスペースとなっている。
|
 |
| そして、建物の中に存在感たっぷりに鎮座するコーンの形のコンクリート(写真)。その無機質ながらもユニークな形体は、未来的な雰囲気を醸し出している。内部は厨房となっており、上部は世界的に有名なフレンチレストランや気軽に利用できるカフェが設置される予定だ。あたかもガラスの壁に囲まれた要塞のような雰囲気だが、アートの世界から急に現実の世界に引き戻される心配はなさそうだ。その他にも、随所にデザイナーズチェアなどが置かれ、意匠性、実用性の両面に配慮した什器類も目を楽しませてくれる。
|
|
| 美術と人々の間に開かれた新しい関係 |
 |
 |
このコレクションを持たない美術館は、あらゆる意味で自由度が高く、既存の枠組みに捕らわれない新しい美術館のあり方を期待されている。ユニークな建物しかり、オーソドックスでありながらも、その名前に込められた「新」という文字に、その様相を垣間見ることができる。
開館記念展では、「20世紀美術探検−アーティストたちの三つの冒険物語−」 が開催される。絵画・彫刻のほか、デザイン・工芸・建築など、様々な分野から、20世紀の物質文明を革新的に表現したアーティストの作品を展示するほか、国内外の多くの美術館より約600点もの作品を、6,000m2の広大な展示空間に集める。
東京を代表する都市「六本木」から発信される、新しいアートの波。国立新美術館サイドは、クラシカルな印象のアートの世界を、もっと身近に、様々な層の人たちに体感してほしいという。オープン記念展に平行して開催されるいくつかの展覧会の中には、文化庁メディア芸術祭と称したアートとエンターテイメントをテーマとしたアニメ、マンガなどの様々なメディアを縦断して紹介するユニークな企画もあるとのこと。日本独自の文化とその土壌をバックアップしつつ、開かれたアートの世界を体験させてくれそうだ。 |
 |
|
|
|